「黒は広大に広がる深い宇宙を、赤は人と人をつなぐ赤い糸、または血液の色を表す。」
とは作家の言葉であり、展覧会会場の壁に書かれていたもの。
↓この記事は前編と後編に分かれています。こちらが前編です。↓↓↓
🌸「静けさの中で」
次に展示されている巨大なインスタレーションは、「静けさの中で」
燃えて焦げたグランドピアノ、黒い椅子が並ぶ不気味で悲しさの燻る作品。
作家が9歳の時にあった隣家の火事の記憶から制作したとのことです。
糸は毛糸ではなく合皮を糸状に割いた素材のように見えます。
🌸「時空の反射」
ドレスが黒い糸で覆われた「時空の反射」はよく見ると中に鏡が入っており、闇の中に浮かび上がる白いドレスが不安な気持ちにさせられます。エドワードゴーリーの作品にも通ずる不気味な雰囲気…。
子供の頃は夜が怖くて、あの闇の中になにか息を潜めているようなそら恐ろしい感覚だったのですが、それを彷彿とさせる感覚。
🌸「内と外」
ベルリンで廃棄された窓を250枚集めて作られた作品、「内と外」。
窓枠がぼろぼろになり、ヒビがが入ったり汚れたガラス達。
ベルリンの壁崩壊から28年経ちましたが、これら廃棄された窓は内側から、外側から、色々な人の歴史を見つめてきたもの。
内側からライティングされており、中に入ると時空を超えた廃墟にいる感覚です。
インスタレーション群を抜けると壁にまたドローイングの展示。イメージの源泉です。
ドローイングの展示が過ぎると、再度インスタレーション作品。
🌸「集積ー目的地を求めて」
440個のスーツケースが赤い糸で天井から吊るされている「集積ー目的地を求めて」
吊り下げられたスーツケースは時折ガタガタと内側から動き、動いていないスーツケースに紐が当たって、互いに揺らし合う。
階段状に空へ上がっていく構成をみると、単なる空の旅ではなく魂の旅なのでしょう。
紐に吊られぶらぶらと不安定な状態は、行先が決まらない集団(人)の気持ちでしょうか。スーツケースの中からカラカラという音がするものもあったように思います。
最後に展覧会を締めくくるのは、ドイツ人の子供たちへ「魂(seele ゼーレ)はどこから来るのか」というインタビュー画面4つが並ぶ作品。
魂はどこからきて、どこに向かうのか?
とても興味深い展覧会でした。
🌸撮影禁止エリア
撮影禁止エリアにあったのは舞台美術。
東京の国立劇場で公演された松風、タトゥーの舞台美術写真、オイディプス王の映像など。
キール歌劇場で公演されたニーベルンゲンの指輪の舞台は公演中のオペラ映像が流れており、ドイツ語なので何を言ってるのか分からないながらも巨大なインスタレーション作品の中で上演されていてとても興味深いと思いました。
ちなみにMAMコレクションにはフェイクニュースに関する会田誠さん、周鉄海さんの映像作品、MAMスクリーンには高田冬彦さんの映像作品11本(約1時間)、MAMリサーチエリアには走泥社の現代陶芸の始まりに関する資料展示がありました。
高田さんの映像作品は性的な描写も多分にありましたが、可笑しさもあり、面白くて1時間見入ってしまいました。
ちなみにこれは美術展の入り口。奥に「進撃の巨人」展ポスターが入って面白い構図だったのでパシャリ。
また森美術館は六本木ヒルズ52階と高層階の美術館。
チケットで入れるシティービューは晴れの日にはとても良い眺め。
シティービューエリアではピクサー展を開催していたので、子連れやデートにも楽しそう。
塩田さんの展示でもビル街をランドスケープに見立てたような展示方法があり、素敵でした。
直に訪れて感じる空間表現をぜひ実際に肌で感じて欲しい。
そんな展覧会でした。
🌸Lin