イサム・ノグチ発見の道(東京都美術館)に行ってきました!
「イサム・ノグチ発見の道 Isamu Noguchi: Ways of Discovery」展は東京都美術館で2021年4月24日ー8月29日まで開催の展覧会です。
イサム・ノグチとは?
20世紀を代表する芸術家イサム・ノグチは、
1904年11月17日、アメリカ・ロサンゼルスにて父・野口米次郎(詩人)と母・レオニー・ギルモア(教師)との間に生まれた彫刻家・画家・インテリアデザイナー・造園家・作庭家・舞台芸術家の日系アメリカ人です。
1988年に心不全で亡くなるまでニューヨークと牟礼のアトリエを往復し制作活動を行なっていました。
アメリカからはロナルド・レーガン大統領からアメリカ国民芸術勲章、日本からは勲三等瑞宝章(『「国及び地方公共団体の公務」または「公共的な業務」に長年にわたり従事して功労を積み重ね、成績を挙げた者を表彰する場合に授与される』Wikipediaより)といった受賞歴があります。
庭園はユネスコ、IBMなどなど…なおランドアート先駆けとなったモエレ沼公園プレイマウンテンは、ノグチが29歳頃に構想し、死後に完成しました。
「イサム・ノグチ発見の道 Isamu Noguchi: Ways of Discovery」展
「イサム・ノグチ発見の道」展では、
1.彫刻家ノグチの精髄に迫る
2.かつてない“ノグチ空間の体感型展示
3.ノグチ芸術の到達点・牟礼の石彫群が東京へ
という構成で、さまざまな発見の道を歩みながら「彫刻とは何か」追求し続けたノグチ芸術の精髄に迫るというもの。
音声ガイド
今回の展示では、2種類の音声ガイドがあります。
①サウンドツアー
サカナクション山口一郎さんのサウンドツアーです。(800円)
山口一郎さんは一人暮らしを始めた時からイサム・ノグチのAkariを天井にぶら下げ、そこからずっとそのあかりの下で曲を作り続けてきたアーティストです。
私自身がサカナクションについてものすごく詳しいわけではないのですが、「夜の踊り子」など好きな曲も色々。
トータル約1時間くらいの構成です。(各部20分程度だったと思うので)
私はガイドにするのかサウンドにするのか悩んでサウンドツアーを選んだのですが、これがなかなかよかった!(後述します)
②音声ガイド
声優の日野聡さん。鬼滅の刃で煉獄さんの声をしていた人気の声優さんです。(600円)
なかなか、あざと…いやなんでもないです。
展示会場
展示
展示会場の構成は3フロア。
1つ目のフロア、2つ目のフロアは写真撮影可能とのこと。(フラッシュは禁止)
というわけで、撮影した写真の一部を載せつつ、展覧会を紹介していきたいと思います。
第1展示会場「彫刻の宇宙」
中央の天井からはAkari(あかり)が集められており、スペース中ほどに小道が作られていてゆっくりと灯りの中を散歩するように空間を楽しめるインスタレーション。
出迎えるのは「黒い太陽」、スウェーデン産花崗岩による彫刻作品。この時点で結構雰囲気がありますよね。
室内にはノグチの彫刻作品が縦横無尽に展示されており、好きな作品から好きなようにうろうろまわりながら見れるので、混み合う絵画展示のように先に進まないということがないです。
(とはいえ平日の昼間だったので土日の様子はわかりませんが)
サウンドツアーの選曲
サウンドツアーからはアーロン・コープランド「アパラチアの春」、
イサム・ノグチと同時代にジャズ界を引っ張ったデューク・エリントン、
交流のあった、ジャズ歌手・ノラジョーンズの父親ラヴィ・シャンカル(Ravi Shankar:インド音楽シタール奏者)の楽曲、
牟礼のアトリエに持っていたレコードには尺八の山口五郎の曲もあったとのことで、尺八の曲「鹿の遠音」(二世青木鈴慕/横山勝也)
李香蘭の「夜来香」(イエライシャン)李香蘭は妻であった山口淑子さん。結婚していたのが4年間ですが、離婚の理由はノグチがあまりにもアメリカ人だったからという理由だとか。
そのことがきっかけで、ノグチの目は世界へと向かっていったのです。
演出
1951年に岐阜提灯をみたことから制作が始まったAkari(あかり)シリーズはノグチのライフワークともなった光の彫刻。
天井から無数に下がったあかりは定期的にゆっくりと消えたり、ついたり。
NHKのインタビュー映像
第1展示室を出ると、NHKのインタビュー映像が。そこでノグチは、あかりとは明るくするだけじゃなく空間を軽くするものだと語っていました。
また石彫について、地球は大きな石であり、人間は石から生まれて石に戻るものであると話す。
何かを感じるというのは触感だったり味だったりするものであるが、ノグチは石の中にもっと深い何かを感じて欲しいと。
第2展示会場「かろみの世界」
lightは、灯り(あかり)という意味と軽いという2つの意味があります。
この第2展示室のテーマは、日本文化の諸相にみられる「かろみ(軽み)」を表現する世界です。
金属のオブジェ
金属の一枚板を使った彫刻はまるで折り紙です。
重い素材を使いながら、不思議と軽い、かろみがあります。
サウンドツアーの選曲
サウンドツアーからはウィリアム・シューマンのユディト(ノグチが舞台美術を担当)、
ニューヨークを拠点としていたイサム・ノグチと同時代にジャズ界を引っ張った存在チャーリー・パーカー、アート・ブレイキーの楽曲、
尺八奏者のクリストファー遙盟「迦桜羅の夜」。尺八と雅楽に使われる龍笛の組み合わせにノグチは感動したのだとか。
あかり
さまざまな形のあかりの展示です。バックの壁がディープブルーなので、光の彫刻は形がくっきりとわかる展示に。
空間の照らし方もですが、並んだ灯りが床に落ちた形もとても良い雰囲気。
遊具
この赤いオブジェ、イサム・ノグチというよりポンピドーセンターあたりにありそうな現代美術作品のように見えます。
実はこれは「プレイスカルプチュア」(1965-1980年ごろ)、遊具なんですね。ちょっと意外でした。
第3展示会場「石の庭」
ノグチは日本庭園を「空間の芸術」と考えていました。
牟礼のアトリエから運ばれた石彫群が配置された第3展示室を歩いてみると、
枯山水、石庭のある日本庭園を散歩しているかのような気分に。2019年に梅雨の京都の寺社巡りをしたのですが(ブログ記事はこちら)
サウンドツアーを聴きながら第3展示室の作品を見ていると、水の音や緑、自然の中の空気を感じられてきます。
撮影禁止エリアのため写真はないのですが、この動画の最後に第3展示室の様子が入っているのでリンク貼らせていただきました。
サウンドツアーの選曲
サウンドツアーからは尺八楽曲:中能島欣一「六段」。箏曲家・川村京子にノグチはこの曲が好きと話していたという。
イサム・ノグチが晩年に仲良くしていたことから、牟礼のアトリエで琴を弾いていたこともあるそう。自然に溶け込む音を好んでいたようです。
さらに尺八の楽曲からは、山口五郎「巣鶴鈴慕」(1977年の米国惑星探査機ボイジャー2号にも搭載された楽曲)
武満徹「巡りーイサム・ノグチの追憶にー」1998年にイサム・ノグチの死を悼んで作ったフルートの楽曲です。
石の表情
「イサム・ノグチ発見の道」展最後には、ノグチが彫刻に使っていた石が並ぶスペースがあります。
こうやってみるとさまざまな表情があって面白い。
ノグチは最初、思ったように言うことを聞かない石を彫ることに集中していましたが、そのうち石に言うことを聞かせるより自然に任せるようになってきたのだとか。
ちなみにノグチは晩年に、「私は地球人になりたい」とよくこぼしていました。
アメリカ人でもなく日本人にもなれず、揺れ続けたアイデンティティ…
なんだか切なくなるとともに、もう自然の一部に戻っていったのだなあと思うと、感慨深いです。
死因が心不全なので、何か劇的な体の変化・苦痛があったわけでもなく、自然のままに土へ、石へと還っていったのですね。
イサム・ノグチのインテリアデザイン
展示会場の2にはフリーフォームソファが配置されてて、観るのに疲れた足を休めることができます。
枯山水、石庭を彷彿させる形。とても座り心地が良いです。
北欧系のインテリアにも合うデザインですよね。そういえばミナペルホネン展の椅子も作家デザインの椅子でしたが、こちらも座り心地がとてもよかったのを思い出します。(ブログ記事はこちら)
【Lサイズ ソファ単品】 イサム・ノグチ フリーフォームソファ デザイナーズ リプロダクト
企画展のショップにはやはりあかりシリーズが。
完全受注ですがローテーブルなどもありました。
床置き系もいい雰囲気ですが、展示会場にあったような長くて天井から吊るすタイプのあかりがちょっと欲しいなあ。
イサム・ノグチの美術館について
イサム・ノグチの美術館は、アメリカと日本の香川県高松市・牟礼にあります。
イサム・ノグチ庭園美術館
牟礼にあるのはイサム・ノグチ庭園美術館(公式サイトはこちら)、今回の石彫群はここから運ばれてきました。
今はコロナで国内の移動もままならないため(医療関係者なので)しばらく行けそうもないのですがいつか行きたい場所です。
イサム・ノグチ美術館
ニューヨークにあるイサム・ノグチ美術館(公式サイトはこちら)です。アメリカもいつになったら行けるのでしょう。
早くコロナ収束して欲しいと切に願うばかりです。
庭園系の美術館といっていいのかわかりませんが、杉本博司さんの「時間の庭」で出てきた「江之浦測候所」(2017年開館、小田原文化財団)にもいってみたいですね。(ブログ記事はこちら)