パレスチナ刺繍帯クリスマスマーケットに行ってきました!レポです。
パレスチナの民族衣装は美しい手刺繍として世界的に有名で、大英博物館にも沢山のコレクションが所蔵されています。
しかし現在、たびたび起こる戦争と難民生活の続く状況であり、民族衣装を刺繍したり着たりする機会がなくなりつつあります。
そのため刺繍は難民キャンプで生活を支えるための技術となっており、難民キャンプの女性たちは刺繍を使ったバッグやドレスなどで収入を得ています。
NPO法人やボランティア団体などでポーチや小物類を販売しているのを見ることがあるかと思いますが…
日本の着物に合わせる帯というアイデアモノはなかなかありません。
そもそも日本の織物と遠く離れた外国の民族衣装の刺繍が合うのか?という疑問もありましたが、これが意外と合うんですよ。
🌸パレスチナ刺繍帯
カラフルな刺繍を振袖に合わせると、めちゃくちゃ華やかで可愛いですよね🥰
なにぶん、日本にはない図案・模様であり珍しい組み合わせですから、他の人とちょっと違う感じになるのも良い。
この企画は株式会社ICEJ(International culture Exchange Japan)の「パレスチナ刺繍帯プロジェクト(Palestinian Embroidery OBI Project)」によるもの。
NGO団体などによる支援としてではなく、ビジネスとして現地NPOのInash al Usraをパートナ0ーにして女性達の自立を支援することを目的とされています。
(ICEJと言っても国際キリスト教大使館エルサレムのICEJではないですよ)
私、着物は着ないけど布フェチなんです。
というわけで着物が好きな先輩ナースを誘ってパレスチナ刺繍帯クリスマスマーケットを見に麻布十番へ行ってみました!
🌸クリスマスマーケット(麻布十番)
2020年12月16〜19日の四日間開催されていたパレスチナ刺繍帯クリスマスマーケット(麻布十番商店街の大通り沿いにあるギャラリー)へ。
入口にはパレスチナの刺繍が施されている民族衣装がお出迎えです。ベツレヘム・ジャケット( taqsireh )という短めの上着に帽子を合わせています。
ジャケットの下に着ている袖の広がった服はthob malakと言います。ジャケットのベルベット生地と、中の服に見事な刺繍が施されていますね。
そして色の合わせ方などなど、異国情緒満載で素敵です。
🌸パレスチナ刺繍の伝統的図案
パレスチナ刺繍の伝統的図案は花や月、星といった身近にある自然のものが多いのですが、中でも特徴的な図案についてご説明します。
糸杉
こちらの名古屋帯はシリア産モアレ生地、生産地はラマラ(西岸地区)。
左下の赤い帯以外は三角錐の木の形が並んでいます。モチーフは「山」、「スギぼっくり」、「ジャッファの糸杉」です。
糸杉は地中海沿岸に多く生えており、パレスチナ刺繍の特徴的デザイン。
ギリシャ神話では、美少年のキュリパッソスが姿を変えられたため欧米では追悼や喪のイメージがあります。また、ゴッホが好んで描いたモチーフでもあります。
古代のエジプトやローマでは神聖な木とされており、生命や豊穣のシンボルです。
イエス・キリストが磔にされた十字架はこの木から作られたという伝説もあります。
また、同じ糸杉でも地方によって「ヘブロンの糸杉」「ジャッファの糸杉」とデザインも色々あるようですね。
ちなみにモアレ生地というのは見る方向によって木目の模様が見える織物。(または加工)
左下の赤い名古屋帯の模様は、「鳥の羽根」「鍵」です。
ベツレヘム刺繍
上段にあるのはパレスチナ・ベツレヘム刺繍(カウチングステッチ)のストール。生地はインド産シルク。
ベツレヘムはヨルダン川西岸の南にあるパレスチナ・ベツレヘム県の県都。イエス・キリストの生誕地です。
エルサレムとは10kmほどしか離れてませんが、現在はイスラエルが建設した分離壁で隔てられています。
(ちなみに分離壁の近くにストリートアーティストのバンクシーが風刺を効かせたホテルを建てています。バンクシー展のウォールドオフホテルについての記事はこちら。)
上段右はジャッファの生命の樹。生命の樹といえばユダヤ教のカバラに出てくるアレでしょうか。
上段左と真ん中にあるストールの模様も伝統的な刺繍柄とのことです。
ベツレヘム刺繍のストールは2018年にX JapanのSUGIZOさんがパレスチナライブ開催の際に現地でストールをオーダーされたとのこと。
実はこの日、そろそろ取りにみえるというお話でした。
待っていたらお会いできたのかもしれないですけど、芸能系に疎い先輩と私はマーケットを出てしまい。
SUGIZOさんが後日SNSにストール写真をあげてみえるのを見るとなんかちょっと待ってれば良かったかなあと思ってみたり。(めちゃ美形…今更ですけど)
アーモンドフラワー
写真の下段にある3つの名古屋帯はシリア産のモアレ生地「アーモンドフラワー」の刺繍パッチワークです。生産地はナブリス。
アーモンドフラワーはアーモンドの粉ではなく、花です。桜の花によく似ていて、春先にたくさんの花を咲かせてたくさんの実をつけるため、豊穣の象徴。
(花言葉には無分別というマイナスのイメージもあるようですが)
クリスマスマーケットではICEJ代表の山本真希さんが刺繍帯を付けて説明してくださったのですが、このアーモンドフラワー図案の帯はこんな感じ。可愛いですね!
帯の仕立ては一級和裁職人の方が仕立てされるそう。
パシャのテント、お守り
下段の左右は「お守り」シリア産モアレ生地、生産地はラマラです。
この三角形の形のデザインがお守りなんですね。
上段左と下段真ん中は、「パシャのテント」、「雪の結晶」。シリア産モアレ生地、生産地ラマラのアマリ難民キャンプです。
パシャというのは「オスマン帝国の高官、高級軍人の称号」の意味で、男女問わずに使える模様。
雪の結晶
こちらの写真も「糸杉」、「雪の結晶」です。
下段の真ん中と右が雪の結晶なのですが、八芒星の形ですね。
より詳しく知りたい方はモチーフの解説などが載った刺繍の本など参照にされるのが良いかも。
🌸「世界はほしいモノにあふれてる」
この真ん中の水色とマゼンダ・ピンクの鮮やかな帯模様は左から「麦の穂」「水瓶、葡萄、花」「ヒル」「真実の木」「ベツレヘムの星」「王冠」「エルサレムのタイル」
NHKの「世界はほしいモノにあふれてる」(京都KIMONOスペシャル)で紹介された帯です。
振袖に合わせると物凄く華やかになりますね。可愛い〜!
こちらの着物は加賀友禅。本間哲哉先生の作品です。
手作業のクロスステッチ刺繍がびっしりの帯は、1本製作するのに5〜6ヶ月かかるとのこと。
生で見るとまたさらに、とても素晴らしいです。
クリスマス刺繍帯クリスマスマーケット、来てよかった!
これらの帯は個性的な色使い・柄ではありますが、意外とどんな着物生地にも合いそう。
🌸帯どめ
帯留めにもカラフルな刺繍です。
一式揃えたら、映えそうですよね。
🌸ガザ難民キャンプのクッション
ガザ地区とはパレスチナ国(パレスチナ自治区)の行政区画です。東地中海に面した種子島ほど(東京都の60%ほどの面積)の地域に居住不能なまで人が溢れ人口の45%は子供です。
失業率が40%というガザ地区に住む人々は、7割が第一次中東戦争で発生したパレスチナ難民とその子孫なのだとか。
情勢的には今もなお危険な地域であり落ち着かないエリアでもあります。
こちらのクッションにも「糸杉」と「お守り」が刺繍されています。
🌸ウズベキスタンのシルク
パレスチナでは刺繍には20世紀の中頃までは絹糸を使用されていましたが扱いが難しいため、現在はフランス製の綿糸を使用されています。
着物の帯には綿の糸より絹の糸の方がよりTPOに合わせられるため、ゆくゆくは絹糸で刺繍をということで、
ウズベキスタンにある絹の都マルギランで絹糸を調達し、今は小さな刺繍で試作している段階だそうです。
クリスマスマーケットにはウズベキスタンのアドラス(絹綿絣織物)も展示されていました。(テーブルの上に並んでいる布です)
国が違えば布の印象もまた全然違ったものになりますね。
私はウズベキスタンのアドラス(絹綿絣織物)を使用したコンパクトミラー(マーケットで3850円でした)を購入しました。
🌸パキスタンの模様
こちらは非売品の帯。蝋を使用したパキスタン製の布。
この虹色の発色、良いですね。
着物の帯に使うとこれもまた面白い組み合わせになりそう。
🌸小物類
小物類の一部です。糸杉模様の名刺入れや、ヘブロンのお守り模様のポーチなどが有りました。
ちなみにパレスチナ刺繍帯クリスマスマーケットを企画したパレスチナ刺繍帯プロジェクトさんは元々、
2020年の2月に刺繍職人さんをパレスチナから招いてファッションショーや音楽、刺繍のワークショップなどのイベントをクラウドファンディングで企画されていて、私も寄付させていただいたのですが、
コロナの関係で秋に延期、それでも状況が落ち着かなかったため開催がされなかったということが有りました。
ワークショップもショーもかなり楽しみだったので残念な限り。
クラファンのお礼は入場券とワークショップのチケットだったのですが、行けなくなった代わりにブローチとポーチをいただきました。
これがそのブローチとポーチです。ブローチはあまり使わない小物だけに時々眺めているのですが、ポーチはいつも使っています。
いつかまたこの企画が行われるといいなあ。早くコロナが終息しますように。