アムステルダムを拠点に活動する写真家シャルロット・デュマの展示が、銀座にあるメゾンエルメスのギャラリーで開催しているので観てきました!
デュマは1977年にオランダ、フラールディンゲン生まれの作家さん。
現代社会における動物と人間との関係性をテーマに、騎馬隊の馬や日本全国に現存する在来馬を20年に渡り撮影しているフォトグラファーです。
ベゾアールというのは動物の消化管内部に出来る結石のことで、人間で言うところの「最近背中に激痛があるんで受診したら石ができてましたわ〜」
っていうアレとはちょっと違うのですが体内に形成される石という意味では近いかもしれません。
このベゾアール(結石)、現代では医学的・生物学的に証明できるものですが、古い伝承の中ではお守りや神秘的な想像に結びつく存在だったようです。
デュマは馬の撮影や史料を通して原始の風景を紐解き、人が自然の一部として動植物と共存していく必要があると作品から語りかけてきます。
🌸黄金の木馬
8階展示室に入って最初にお目見えするのがこちら。
シャルロット・デュマが魅入られたエミール・エルメス・コレクションの「黄金の木馬」。19世紀の中国またはチベットのものとされ、柏の木に塗料が塗られたものです。
🌸瓢箪、馬沓(うまぐつ)
上部に馬の像が飾り付けられた瓢箪は、デュマが友人から贈られたもの。中国の不死身の道士(張果老仙人)が愛馬を瓢箪の水筒に入れて持ち歩いていた物語から。息を吹きかけると愛馬がハヤテのように現れるといいます。
馬沓(うまぐつ)は馬の草鞋。昭和23年ごろまで使われていたがすぐに履き潰されてしまうものでもあり、農家の経済が良くなった頃に蹄鉄に変わっていきました。
🌸映像作品「潮」
絶滅が危惧されている与那国島の希少在来場「ヨナグニウマ」と、少女ゆずの物語。
天井から垂れた青い布が風で緩やかにふわ、ふわとする間に与那国島の馬と少女の映像が流れる。
建築家レンゾ・ピアノによる壁のガラスブロックを通して、屋内に入ってくる光がまた良い感じです。
ゆずの愛馬うららの帯には沖縄本島北部のテキスタイルデザイナー、キッタ・ユウコさんの布を使用されています。
キッタ・ユウコさんは沖縄在来の草木の葉や樹皮を煮立てて水の中で発酵させた染料を使い、優しい色合いで素敵です。
🌸埴輪
大阪にある四條畷市歴史民俗資料館が所蔵する埴輪にデュマは衝撃を受けました。
「埴輪は死者を我々の住む物質世界から、あの世へと導く冥銭と同じ意味を持って」おり、魂を宿す依代である。
死の旅路に他者の道連れを作るということに命の無常と存在の弱さを感じる…とシャルロット・デュマによる散文に書かれている。
🌸依代
2020年の映像作品「依代」にはデュマの愛娘・5歳の少女アイヴィが馬の衣装をつけオランダから与那国島まで1人で旅をするロードムービー。音声はありません。
少女と与那国島に自生する馬との出会いまでが映されています。
この少女の衣装もキッタ・ユウコさんが作ったもの。
🌸結石
近代ヨーロッパで、一角獣の角と結石は魔力を持つものとされてきた。角はお守りに、結石は粉末にして解毒剤などとして使用されていたらしい。
土や石の混じった草を食べた動物は十分な水分が取れないと石を体外に出せず体内で凝固するのですが、
馬の胃の中から見つかったこの結石は丸く驚くほど大きい。石を命がけで腹の中にこしらえた動物の生涯の作品であって、抵抗の証でもある。
🌸アニマ
デュマの最初の映像作品「アニマ」には薄暗い厩舎で眠りにつく馬が写されています。
撮影場所となったのはアーリントン国立墓地(アメリカ、バージニア州)。1864年より南北戦争、第一次・第二次世界大戦、ベトナム戦争の戦没者が祀られている場所。
アニマというのはラテン語で「魂」。
休息する軍馬の映像が最後に、しかも暗い小部屋の隅に展示されているというのは私たちに考える余韻を残す展示の仕方だなと思いました。
↓シャルロット・デュマ写真集WORK HORSEは、日本の在来馬8種の馬を撮影した写真が本になったもの↓(洋書なので良いお値段ではありますが、興味のある方はぜひ)
🌸銀座メゾンエルメス、その建築について
写真家シャルロット・デュマの展示「ベゾアール(結石)シャルロット・デュマ展」は2020年の8月27日〜11月29日の開催。
会場は銀座ソニービルの近くにあるメゾンエルメスフォーラムで、この建築物は現代建築界の巨匠の一人であるイタリア人建築家のレンゾ・ピアノ(1937年〜)の作品です。
レンゾ・ピアノといえばパリのポンピドゥーセンターが代表作ですが、2001年に建てられた銀座メゾンエルメスは11階建てのビルを1万3000個のガラスブロックでくるんだような外観となっており銀座のランドマークの一つとも言える建物です。
ちなみに展示会場となったのはフォーラム8階、9階で、エレベーターで8階にあがったあとは階段で9階へ移動。
建物内部も素敵だったので撮影できたらよかったのですが、写真はご遠慮くださいとのことでした。
↓パリのポンピドゥセンターはこんな感じです。↓
↓同じ日に行ったピーター・ドイグ展の記事も良かったら覗いてみてください!↓
Lin🌸