赤や黒の糸を使用した室内いっぱいの大きなインスタレーションが有名な塩田千春さんの展覧会に行ってきた時の記事です。昨年書いた記事なのですが、移転前のブログだったので加筆修正してこちらのブログに移すことにしました。
🌸 塩田千春 魂がふるえる展
「魂が震える展」は、森美術館にて2019年6月20日~10月27日の会期で開催された展覧会です。
塩田千春さんは1972年生まれでベルリンを拠点に世界で活動されている作家さん。
今回の展覧会は25年間の活動を集大成にしたものです。
ドローイング、インスタレーション、映像作品、初期の油彩、舞台美術などに加え、新作のオブジェなどもありました。
また、舞台美術に関する一部の作品を除き、撮影可能な展覧会となっているのも魅力的。
展覧会副題「魂がふるえる」には「言葉にならない感情によって震えている心の動きを伝えたいという作家の思いが込められている」とのことです。
🌸「手の中に」
立体作品に始まり、続くのはドローイング。
こちらは紙に描かれたドローイングですが、赤い糸を針で通して縫ってあり、ふわっと滲んだ黒や赤の色味に対比する構成が印象的。
そして張り詰めた糸は一本であれば緊張感がありますが、方向や長さがまちまちに集められていると、ぼわっとしたエネルギー、気配の塊のような不思議な空間になります。
🌸「不確かな旅」
一番最初に展示されている巨大インスタレーションは「不確かな旅」
赤い毛糸が白い壁、黒い枠組みのみの小舟から巣のように張り巡らされ、室内灯で透ける光でまるで血液の中にいるような感覚に。
動きがあるわけではないのですが、毛糸を使っているので温かみがあり、空間が生きているような感覚。
毛糸は壁にステープラーで留めてあり、展示のための再構築は大変だったのではと思います。
続いて大学でのパフォーマンスの写真や海外でとった映像などの展示がありました。そこには作品の中に自己を没入し表現していく作家の葛藤が。
また初期の油彩には、テクニックだけで描いてしまい心が入っていないと考えていたことを作品の説明書きにありました。これは日本で美大受験をしてアートを目指した人に起こりうる葛藤ではないかと思います。
あれはとても苦しい。私にとってはスランプの入り口でした。
🌸「1本の線」
スランプになった塩田さんが豆の鞘を集めて線にした作品があったのですが、このたどたどしい稚拙なラインはプリミティブで、線を描くことに対する初めての要求、つまり何も期待せず最初に描いたかのような無意識に出来た「線」です。
わたしは好きです。なんというか、愛おしい、線。
面白いとおもったのは「ウォール」という映像作品で、点滴より少し細いチューブに血液を思わせる赤い液を流し、横になっている作家の上を赤く染めていく作品。
ちなみにこの美術展、1分以内であれば動画の撮影も可能だったのですが気づかず…撮影しなかったことが悔やまれます。。
バスタブで延々と泥水を頭から被り続ける映像などもあり、思わず見入ってしまうものがありました。
🌸「再生と消滅」
「再生と消滅」新作のオブジェ、「セル」細胞を表すドローイングなど、よりバイオアート的な方向性を示していきます。
バイオアート的方向性が出てきたのは、塩田さん自身が12年前に癌にかかり、それが再発し闘病生活を送っていた事がきっかけとなったようです。
抗癌剤治療を受けるなかで「魂が置き去りにされている」と感じた経験がある(美術手帖より)
https://bijutsutecho.com/magazine/news/report/20030
私は癌にかかったこともなく抗がん剤治療を受けた事もありませんが、魂が置き去りにされている感覚というものは想像すると巨大な孤独の気配の中で息だけしているような辛さがあります。
↓その②へ続く↓↓↓