こんにちは、Linです🌸
ヨルダンの食文化や現在の状況について現地にお住まいの方からzoom(オンライン)でお伺いする機会がありまして。
ヨルダンといえば中東にある国。
世界の食を含めた文化や伝統に興味ある私ですから、もちろん参加。
そこで聞いたお話は地理、気候、食文化、コロナの状況、難民など幅広い内容でした!
というわけで記事に書いていきたいと思います。
🌸きっかけはザータル
ある日、Facebookを見ていたら、「フレッシュなザータルに興味のある方、お譲りできます」という記事が目に飛び込んできました。
ザータルとは?
ザアタルあるいはザータル(アラビア語: زَعْتَر, IPA: [ˈzaʕtar])はオレガノ(Origanum)、バジルタイム(Calamintha)、タイム(Thymus)、セイボリー(Satureja)など、種類が近い中東のハーブ品種を総称的に呼ぶ言葉である[1]。ザアタルという名称はOriganum syriacum(シリアンオレガノ(英語版))を指す時にもっともよく使われ、これは聖書研究においてはタナハのヒソップ (ヘブライ語: אזוב [eˈzov])を指すものだと考えられている[2]。また、乾燥させたヒソップの葉にゴマ、乾燥させたスマック、塩その他のスパイスをまぜて作る調味料もザアタルと呼ばれる[3]。
https://ja.wikipedia.org/wiki/ザアタル
中東のハーブ品種を総称的に呼ぶのもザータルなんですね!調味料なのかと思ってました。(ビックリ)
調味料のザータルは、乾燥させて細かくしたタイム、オレガノ、マジョラム等のハーブを混ぜて焼き、胡麻と塩を加えるというのが主なレシピのようですが、
酸っぱい香辛料スマック(パレスチナに自生する低木。赤い果実を粉末にしたもの)を入れたりすることもあるようです。
伝統的に中東一帯の主婦は自家製でザアタルを作っているのですがレシピは秘密にされることもあり「家庭の味」。
(ちなみにスマックはフムスの彩りや風味を付けたりするのに使用されることも。)
レバノン料理を楽しむ会
「レバノン料理を楽しむ会」は、「『世界四大料理の一つであるレバノン料理』ベイルートから遥か9,000km離れたこの場所で、本場のレバノン料理を楽しむ企画」をしているコミュニティです。
現在はコロナ禍で食事会やお料理教室が開けないため、レシピをあげたりオンラインの料理教室を行っています。
🌸ヨルダンからのメッセージ〜 川村さんを囲む会〜
ザータルは希望者数が入荷された量を超えてしまい残念ながら入手出来なかったのですが、
しばらくしてからレバノン料理を楽しむ会よりあるメッセージが届きました。
「ザータルの入手にご協力いただいたヨルダン在住の川村貴子さんとご友人の安島さんに、首都アンマンや周辺地域の生活についてお話を伺うことになりました。
川村さんはヨルダンの外交官を長年勤められたご主人様とともにアンマン在住で、音楽や難民支援など、様々な場面でご活躍の素敵な女性です。
ザータルに関心をお持ちになった皆様に、ヨルダンをご紹介したいと、興味深い動画メッセージを寄せてくださいました。
生活に密着した10分ばかりのものです。この動画をご覧ください。」
そして、「この動画の作成に協力してくださった、宇宙工学がご専門で現在アンマンに短期滞在中の安島さんを交えてお話を伺います。」ですって。
おおお。それは興味深い!!
日時は2020年12月27日。時間は1時間ほど。質問もできるということで、ワクワクしながら参加させていただきました!
そこで動画や質問にでた話をレポしつつ、色々書いてみようと思います。
(私が調べたことなどと区別するために「川村さんを囲む会」で出た内容については以降「」で大まかに記してあります。使用された言葉をそのまま記録してはいませんが)
ちなみにこのzoomミーティング、日本中近東アフリカ婦人会(NCAF)主催のミーティングでした。
あれ、ここってもしかしてバザー行きたいと思ってチェックしてたところでは…👀
🌸ヨルダンの地理と食文化
ヨルダンってどこにあるの?
ヨルダン・ハシミテ王国は中東〜西アジアにある立憲君主国家。
「アンマンは標高900mだけど死海はマイナス400m程のところにあるので、雨が降れば暖かくなります。その時オレガノが手に入るタイミングです」
標高900mというと高尾山2個分よりちょっと低いぐらい。高地なんですね〜
そうそう、死海は海抜マイナス430メートル(湖面)で、地表において最も低い場所にあります。
白亜紀以前は海であったところが海底隆起に伴い断層が生じたと推測されており現在はヨルダン川という水源はあるものの、
年間降水量は50〜100mmと少なく、気温は20〜39度と高い環境のため水分が蒸発していきます。という感じで塩分濃度の高い死海となったんですね。
ヨルダンの食文化
ザータル
ザータルには同じ量のオリーブオイルを混ぜてかき混ぜて使います。「パンに塗るとヨルダン定番の朝ごはん」になるそう。
ザータルは肉料理、サラダ、煮込み料理、卵料理にも使える万能のハーブミックスなんですね。
(ちなみに発音的にはザーターという方が近いのか、zoomではザーターと呼んでいました)
また、ザータルを塗るパンとして「ホブス(ホムス?)」を紹介していただきました。(ヨルダンはパンの種類が豊富なので色々あるようです)
ホブスというと、以前、十条にあるクルド家庭料理のお店「メソポタミア」で食べた記事に書いた薄いナンですかね。
また、「ザータルは家庭の味。なので、お使いでパンを買ってきてと言われたヨルダンの子供は自分の家のザータルとオリーブオイルを持ってパン屋に行き、
そのザータルを使ってパンを焼いてもらって暑いうちに家に持って帰ったりしている」そう。
ちょっと微笑ましい話です。
川村さんと一緒にお話をしてくださった安島さんにヨルダン料理で何が好きか質問が出ました。
「マクルーバですね。いわゆるひっくり返しご飯です」
マクルーバ
マクルーバ(MAKLOUBA)はアラビア語で“ひっくり返す“という意味で、伝統的にイラク、レバノン、パレスチナ、ヨルダンで食べられている米料理。
お鍋に肉、ご飯、野菜炒めを順に入れて、お皿に出すときひっくり返すので、ひっくり返しご飯なのです。
マンサフ
ヨルダン固有の料理といえば、どんなものがあるのでしょうか?
「ヨルダン料理といえばマンサフです。ヨルダンの国民料理で米料理です。濃厚なヨーグルトソース、羊肉を使います。ワインに合うのですがワインを飲む文化ではないのでナッツ、オニオンを齧りながら、お祝いの席で食べるんですよ」
ざっくりとしたレシピをかきますと、ジャミード(発酵させた羊や牛のヨーグルト)のソースで羊肉を煮込み、米またはブルグル(小麦の一種)と一緒に種無しの薄いパン(シュラークなど)を敷いた上に置きます。
そこにアーモンドや松の実といったナッツを飾り付けて全体にソースをかけて出来上がり。
結婚式のほか、ラマダン(断食)明けのイード、クリスマス等のお祝いやおもてなしに出される大皿料理です。
米料理にヨーグルトソースをかけるというとインドのビリヤニを彷彿とさせるのですが、調べたところビリヤニのビジュアルとはちょっと違うかな?
砂漠の遊牧民ベドウィンは会食でこの大皿料理を取り囲み、右手の指でとって食べるそう。(左手は背中に回して、使わない)
魚は食べる?
魚はどうでしょう?
「ヨルダン人は魚を食べないんですけど、シリア、イラクの難民がナマズなどの魚食べる文化がありますね」
ヨルダンはほとんど雨が降らないしアカバ湾のごく少ない海岸線を除くとほぼ海に面していないからでしょうか。
(ヨルダン川といえばキリストがヨハネから洗礼を受けた川。魚も居るようではありますが)
スパイスについて
「ヨルダンのスパイスはマイルドなスパイス使いです。シナモン、ナツメグなど」
なるほど。確かに、調味料のザータルもハーブがメインという感じですものね。
調味料といえばミックススパイスのエジプトのデゥッカ(デュッカ)をふと思い出します。エジプトとヨルダンは隣国のようなものですが何故かカイロにヨルダン料理の店が無かったりするようで
ザータルもあまり知られていなかったとも聞きますから、デュッカも全然別の存在とは思いますが、ふりかけみたいに色々使うという点でちょっとイメージがかぶるかなと(イメージの話です)
🌸ヨルダンの社会情勢
ヨルダンの食文化や現在の状況についてのお話ということで、現在の状況について、難民やコロナ、インフラなどお話を聞かせていただきました!
国境と難民
中東というと国境に関する問題が根深いエリアというイメージがあります。
「アラブは一つ。国境は昔なくてイギリスが作ったものです。同じ言語、アラビア語なので、同じ言語で同じ映画を見て笑ったりしています」
同じ言語を話すのに国という線引きなどで争ったりするのは悲しいことですね…
難民が増えたのはイスラエルの建国で。元々いたパレスチナの人々と融合することが出来なかったからとのこと。
難民の受け入れを決めたのがヨルダンのフセイン国王だったため、ヨルダンにはたくさんの難民が周辺諸国から来ています。
一番大きな難民キャンプは12〜13万人居るとか。
「家族が離散しなくていいように難民キャンプがあり、パスポートも用意してくれる。パスポートがあれば産油国の現場で高収入を得て、ヨルダンにいる家族に送金できます」
なるほど。
ただ、難民キャンプには行かずアンマンや他のエリアで潜伏している家庭もあり、そういった家庭では国連が準備している学校や医療施設が利用できずに子供の教育、医療の恩恵が受けられないケースも多々あるのとか。
そういった家庭の子供には「元々の教育水準が高い人達も多いですね。シリア難民の子供はおしなべて躾が良く、アラビア語のほかに英仏語もできる子供もいます」
コロナ状況
「3〜9月は鎖国してうまく抑え込めていましたが、10月から経済優先にして鎖国をといたらあっという間に増えまして。前は1日50人〜100人だったのが、1日1000〜2000人とか。
22時以降の外出禁止はあるんですけどね。水際対策(鎖国)は功を奏してたんですね」
ヨルダンでは金曜と土曜日が休み(日曜日が週の初め)なので金曜にロックダウンしているんですね。
「レストランは21時まで。ラストオーダーは20時です。」
2021年の1月〜2月の日本は20時までの営業で19時がラストオーダー。外国人の入国制限とでどれくらい抑え込めるのか…コロナは今後どうなるのかちょっと心配ですね。
ヨルダンの住みやすさ、インフラ状況
「ヨルダンの物価はまだ安いですね。エジプトと比べるとヨルダンは高いと言われていますが」
今後の発展が気になりますね。
「最近人口が爆発的に増えまして、渋滞がすごいです。急いで高速を作っていますがなかなか間に合わなくて高速も渋滞で。ただペトラなどの観光地に向かう高速は綺麗に整備されています」
観光シーズンについては
「ペトラの鉄砲水ですが、ペトラ遺跡に行く道が細いスークになっていて。そんなに降らないとはいえ雨が降ると水の逃げ場がそこしかないので、どっと流れます。なので雨が降らない3月以降がオススメ。綺麗ですしね」
雨が降るのは冬場なんですね。ヨルダン、いいな。いつか旅行に行ってみたいなあ。
🌸文化について
伝統工芸とお菓子
文化についてはどうでしょう。
「この辺りで1番伝統工芸が発達しているのがシリアです、刺繍など。結婚する時に新郎が妻に服やアクセサリーを沢山買うので、その時に購入されるものが多いですね」
ちょうど12月にパレスチナ刺繍帯クリスマスマーケットに行ったのですが、そこでみた民族衣装とも少し違う感じで綺麗です。(パレスチナ刺繍帯の記事はこちら)
「紛争後から色々周辺諸国からの文化が入ってきました。服飾品もそうですが、特にシリアのお菓子は薔薇の香りがしたりヌガーのようなものがあったり、繊細で素敵です。
ヨルダンは元々田舎の国という感じだったのですが、政治的に落ち着いているので近隣諸国からの難民から色々と文化が持ち込まれています。」
中東のお菓子で有名どころといえばのバクラヴァ。
麻布十番にあるシリア出身のシェフが料理をするアラビアンレストラン「ゼノビアカフェ」でランチをいただいた記事に書いていますが、ローズウォーター(薔薇の花弁の蒸留水)はバクラヴァに使用することもあります。
(この記事ではシリアのお菓子クナーファに使用されていました)
ダンス
文化の中でダンスについての質問がありました。
「今ヨルダンは空前の結婚ブームです。一族郎党呼んで行う結婚式は多い時は1000人規模だったのですが今は20人以上が集まれないので…
今なら新郎が新婦に送る贈り物(服、アクセサリー)がたくさん贈れるからです。」
確かに贈り物が多い方が良いですね。
「ダンスについては、結婚式の食事が出るのが深夜なのですが、集まるのが20時ごろで、そこからずっと踊ります。
ダンスの種類では、ギリシャのダブケという手を繋いで踊るステップ、ベリーダンスなどがあります」
そんなに踊っていたらヘトヘトになりそうです。笑
…さてここで時間がきてしまいました。
ヨルダンの食文化や現在の状況について色々と知ることができて、楽しかったです。時間があっという間でした。
貴重な話を聞かせてもらって川村さん、安島さんに感謝。
それから、この機会を教えていただいた「レバノン料理を楽しむ会」にも感謝です。
後でお聞きしたのですが、安島さんは「旅の覚え書き」という「世界一周ブログ」を書かれているそう。
現地で文化に触れられていて、とても興味深いです✨
(「レバノン料理を楽しむ会」さんのフェイスブックページはこちら。)