東京で世界を食べ歩く、今回はシリア出身のシェフによるアラビアンレストランでシリア料理ランチを食べてみた。レポです。
この日は病棟の先輩と一緒にパレスチナの刺繍帯クリスマスマーケットにいく予定があったので、その前に2人でシリア料理ランチをしに行ってきました。
シリアというと、2010年のチュニジアを起点に始まった独裁政権への民主化運動「アラブの春」波及による影響で、2011年に端を発した内戦が今も続く国。
国連UNHCR協会の統計によると2017年の時点で670万人のシリア難民がいたようです。
国際的、内政面での情勢不安が大きなエリアですが、古代都市アレッポやパルミラ遺跡など、世界遺産登録の場所が6箇所あり、内戦などによる爆撃前は美しい国だったと聞きます。
シリアへは入国できるような状況ではないですが、シリア料理の美味しさは評価が高く、隣国トルコ旅行の際にシリア人街でシリア料理を味わうといった楽しみ方もあるようです。
🌸シリアってどこにあるの?
シリア・アラブ共和国は中東にある共和制国家で、北側はトルコ、東にはイラク、南側にはヨルダン、西にレバノン。それから南西にイスラエル国境を接しています。
面積は日本の約半分ほどで、言語はアラビア語です。9割がアラブ人、残りがクルド人、アルメニア人など。宗教は9割がイスラム教です。
地中海沿岸部は温暖な地中海性気候ですが、内陸は砂漠性気候で乾燥しています。夏と冬の寒暖差が大きく、冬には雪が降ることもあります。
今もなお反政府勢力の影響下にある地域では空爆等の戦闘が続いているのですが、反イスラエル武装組織への支援やイラン(イスラエル敵国)への協力、
シリアの核兵器開発疑惑等の理由でイスラエルと敵対的な関係であるなど国内外で不穏な空気が立ち込める地域です。
(…少し脱線しますと)イスラエルは自爆テロ防止の名目でイスラエルの西岸地区とヨルダンとの間に高さ8メートルにもなる分離壁を建設していて、国際的に物議を醸す物々しい状態です。
社会風刺のストリートアートで有名な、あのバンクシーのホテル(ザ・ウォールドオフ・ホテル)があるのもこの辺り。2020年の横浜バンクシー展の記事に書いているので、ご興味のある方はぜひ。
🌸ゼノビアカフェ
麻布十番の駅から5分と歩かない場所。通りには密やかに看板が出ていて、細い階段を2階に上がるとそこに「ゼノビアカフェ」があります。
ゼノビア(Zenobia)という店名は3世紀にパルミラ帝国を治めていたゼノビア女王からの由来。(パルミラのゼノビアは、オペラや戯曲にもなっています)
お店は入り口からとても可愛いデザインの電燈があったり、内装もなんとも言えないラブリーさ。
アラビアというと千夜一夜物語(アラビアンナイト)ですが、ドアを開けるとそこはもう異国。店内にはシーシャが並んでおり、異国の音楽が流れています。
ランチタイムに行ったのですが、先客の日本人が一人いた以外は中東系のお客さんがテイクアウトをしに来ていたぐらいで静かでした。
また、12時前にはお店の方が床に赤い絨毯を敷き、メッカの方向に向いて礼拝をしている姿も。
東京にいながらにして中東旅行をしているかのような錯覚を覚えます。
🌸ランチセット
ランチセットにはアラビアンランチプレート、ケバブセット、カレーセット、それからスペシャルランチがありました。
ランチタイムのアラカルトには、ケバブヒンディー(ミートボール)、ナスの挽肉詰め、バーミヤ、クスクスが。
とりあえず、異国のお料理をちょっとずつ色々食べてみたいので、アラビアンランチプレートとスペシャルランチをシェアすることにしました。
アラビアンランチプレート(Arabian Lunch Plate)
アラビアンランチプレートのメイン皿写真です。一つ一つのメニューをそれぞれご紹介しますね。
サラダ(Salad)فتوش
ランチセットのサラダはファットゥーシュ(ザクロソースのサラダ)。
ファットゥーシュというのは、焼いたり揚げたりした千切ったピタパン(khubz ‘arabi)とトマト、葉菜のサラダです。
クルトン的に入っている、これかな?
ジャバティ(Nan)
ランチセットには薄いナンのジャバティがついてくるということだったのですが、これは多分、ホブス(アラビアンナン、Khoubz)ですかね?
ジャバティはインドのチャパティみたいにピラピラの薄い生地だったはず。
ホブスの方がおそらく美味しいと思うので、これはこれで良きです。笑
マッザ ペーストなど3種(Mezzeh)مزة
マッザ又はメゼという前菜はペーストなどで、通常、薄いパン「ホブズ」(エジプトで「シリアのパン」と呼ばれている)につけて食べます。
オリーブオイルがかかった白いペーストは朝ごはんの定番、ホムス(フムス、又はホンムス、حُمُّص)。茹でて潰したヒヨコ豆に白ゴマペースト(タヒニ)、レモン汁、塩を混ぜたもの。
オレンジのペーストはムハンマラ。唐辛子とくるみのペーストです。唐辛子の辛味は胡桃の風味でマイルドになっており、食べたことのない味わい。このオレンジ色は赤パプリカも入ってるのかな。
サラダゼイトゥーンはオリーブの辛いサラダで、こちらにもナッツが入っています。
ファラフェル、ヒヨコ豆のコロッケ(Falafel)فلافل
茹でて潰したひよこ豆にパセリやコリアンダーといった香辛料を混ぜ、(穴が小さな)ドーナツ状に丸めたものを油でサックリ揚げた食べ物がファラフェルです。
香辛料が入っていながらも刺激的な風味はなくホクホク。
サンブーサ(Sanbosa)سمبوسك
三角形の春巻き生地のようなものの中にチーズを入れて揚げたお料理です。普通に居酒屋でおつまみにされそうな感じなので、あんまり異国情緒はないかもしれません。
シャワルマ(Roll Sandwitch)شاورما
シャワルマというのはいわゆる回しケバブ(ドネルケバブ)のことです。
包まれているのは鶏や羊などの肉、ファットゥーシュなどのサラダなど。こちらのシャワルマには漬物も入っていました。
スペシャルランチ(Special lunch)
こちらはスペシャルランチのメイン皿。一部、アラビアンランチプレートと同じお料理なので、被らないメニューを中心にご紹介します。
レンズ豆のスープ
クミンの効いたレンズ豆のスープです。スプーンで掬うと、ライスも少し入っているよう。
レモン汁を絞ると爽やかな味わいに。
シェア用に持ってきていただいたカップがまた可愛いのなんのって…。
冷前菜、ペーストなど3種(Mezzeh)مزة
ヒヨコ豆のフムス、ムハンマラ(唐辛子と胡桃のペースト)、それからムタッバルと呼ばれる茄子のペースト(地域によってはババガヌーシュと呼ばれる)。
ムタッバルは焼きナスの中身を潰してタヒニ(白ゴマのペースト)と混ぜたもの。ババガヌーシュは柘榴のシロップが入っているものもあるみたい。
ちなみにタヒニは中華食材の練りゴマで代用できなくはないですが、タヒニは煎ったゴマではないので風味が少し違います。
この茄子のペーストは胡麻の油分でモッタリして、マヨネーズのようにクリーミー。
コッバ、又はクッべ(Kobba)كبة
コッバ(キッべともいう)は挽肉とナッツのコロッケです。
このコロッケ、皮が挽き割り小麦と羊の挽肉を混ぜたもの。中の具は挽肉、玉ねぎ、アーモンド。それを揚げたり、焼いたりしたものです。
挽き割り小麦を皮に使用したコロッケというと、クルド人家庭料理の店メソポタミアで食べたお料理のブルグル(挽き割り小麦)包み揚げクフテー(Kofte)を彷彿。形も少し似ています。
サイズはクフテーの方が大きいですけど。…って、彷彿も何も、クルド人居住地域はシリアも含まれているのでしたね。
ケバブ(Kebab)كباب
中東の有名なお料理の一つ、「シシカバブ」。スパイスのクミンやパセリを練り込んだ羊の挽き肉を串に刺して焼いた定番料理です。
スパイスやハーブがマトンの臭みを和らげてくれるのですが隠し切れてはいないので、羊の独特の風味とこのスパイスの組み合わせが好きな方には堪らないです。
デザート(Sweet)
ランチセットにはデザートが付いてくるのですが、出てきたのはバクラヴァという定番なスイーツ。
バクラヴァ(baklava)بقلاوة
バクラヴァは広範囲の地域で食されるデザートなので聞いたことがあるかもしれませんね。
ピスタチオやクルミといったナッツを折り込んだフィロ生地(紙より薄いパイ生地)を、何層も重ねて焼き、甘く濃いシロップをかけて浸すスイーツなのですが、
こちらのバクラヴァは普通に焼き菓子というか、あまりシロップに浸された感じではなかった(中東デザートは極甘というイメージの割に甘さ控えめ)ですね。(その方が有難い)
レシピについてはアラブでお菓子のハナシ、ゴハンの時間というサイトがすごく分かりやすく面白かったのでリンクを貼らせていただきます…すごい勉強になる👀
クナーファ(Kunāfah)كُنَافَةٌ
バクラヴァだけでは飽き足らず、もう一品食べたくなって注文したのがこちら、クナーファ。
シリアのデザートと言ったらこれですよ!と店員さんに強く勧められたスイーツです。
クナーファ(Kunāfah)は小麦粉の細麺生地(クナーファ生地)でチーズやナッツ、濃いクリーム(カイマクなど)を包んだり挟んだりして焼き上げたあと、シロップまたは蜂蜜などをかけたデザート。
写真では表面いっぱいを覆う細麺(シャアリーヤ)の上に砕いたピスタチオがトッピングされています。この下にあるのはたっぷりのチーズ。
熱々でいただきます。
フォークで掬うとふわっと蕩けるチーズから滴り落ちるシロップの甘味。そこにローズウォーターと油の香りがするという異国情緒たっぷりなデザートです。(カロリーのことは考えない)
ところで冷やして食べるクナーファもあります。オスマリーヤ(Cold Kunafah、عصملية)です。
実食してないので分かりませんが、チーズではなくナッツを挟んだクナーファは冷やして食べられたりするようです。
ドリンク
ハーブティーにはメラミヤ(セージ:お肌と胃腸を整える)、バブンシュ(カモミール:リラックス効果)、マリサ(レモンバーム:リラックス効果、アレルギー)、ザタルバリ(タイム:抗菌・抗ウイルス、消化促進)、ワルドジュリ(ダマスクローズ:美肌)、ゼザフン(リンデン:リラックス、喉の炎症)、ヤナスン(アニスシード消化促進、口臭予防)と豊富なラインナップ。
ズフラットというスペシャルミックスのブレンドハーブティー、ホットジンジャーのジャンガー(消化・代謝促進、食欲抑制)もあったりして、魅惑的。
アラビアコーヒーは細かい粉にしたコーヒーを漉さずに入れ、上澄みを飲むというトルココーヒーの飲み方ですがカルダモンが入っているとのこと。
他にも中東らしくミントティーや、日本茶に似たマッタ茶(金属製のカップに直接茶葉を入れてストローで飲む)、モロッコグリーンティーなど気になるものがいっぱい。
紅茶
とは言っても、ランチセットで選べるドリンクですから、コーヒーか紅茶かウーロン茶…
じゃあ紅茶を…と頼んだら、見てください、この素敵なカップ。ミントの葉が浮かべられているのがまた素敵。
今回お邪魔したゼノビアカフェは、シーシャを楽しんだり、デザートや飲み物を楽しむ感じのお店。
ガッツリ食べに行くなら広尾のゼノビアだとお料理の種類もさらにありそうです。
今回食べれなかったお料理、伝統料理のバーミヤ(オクラと肉を炒めてトマトピューレ、タマリンドで味付けしたお料理)も食べてみたいし、アラビアンコーヒーも飲んでみたい。
いやはや食の好奇心はなかなか満たされないですね。
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