2020年の9月5日〜10月18日の会期で「ショーン・タンの世界展」が横浜そごう美術館で開催されていたので、ショーン・タンの世界展に行ってみた!レポを書いていきたいと思います。
実はショーン・タンが誰か知らなかったのですが、展覧会のポスターに載った絵がすごく好みだったので
約5週間ほどの期間しかなかったのですが頑張って日程を調整して見に行った次第です。
ちなみに今回の展示は撮影不可だったので、出版物の表紙やチラシ、図録の紹介をしながらレポしていきたいと思います。
🌸ショーン・タンとは?
ショーン・タンは1974年生まれ、オーストラリアのイラストレーターさんです。
絵本や映像も製作していて、今回の展示では絵画、絵本のプロット、映像、インタビュー、
コンテ、スケッチ、立体作品などを鑑賞することができました。
🌸ロスト・シング
ショーン・タンの映像作品といえば「ロスト・シング(The Lost thing)」
直訳すると「失われた物」または「迷子の何か」、
展示作品を追っていくと直訳タイトルは後者「迷子の何か」が近い内容だと思うんですが
全映像は展示されていなくてですね、全部のムービーを見るためには1日3回の上映会に
入れるためのチケットを当日配るというシステムでした。
上映時間が14時、15時、16時となっていたので私はパスしましたが(待てなかったため)
ショートフィルムは15〜16分と長くはないので、全部流しておいて欲しかったなあ。(ボヤキ)
(コロナ対策の3密を避ける意味でも仕方ないのですが…)
途中まで(たぶん冒頭の5分程度)見れるようになってたのを見たところ
不可思議で独創的、美しくもホッコリする絵、どこかノスタルジーを感じるストーリーの展開が素敵でした。
これ、ハマる人はめちゃくちゃハマりそう!
2010年の原作絵本刊行から10年後にショートフィルムが完成したのですが
このアニメーションは第83回アカデミー賞で短編アニメ賞を受賞しています。
他にも2011年にはヒューゴー賞(アメリカ、優れたSFやファンタジーに贈られる)をノミネートされたりも。
🌸ストーリー
ちなみにこの絵本の邦題は「あの想定外の変な生き物は何?」です。
(このコロンと丸いフォルムの物体は生き物なんです)
浜辺で見つけた謎の「生き物」。
一緒に遊んでいたら、これ実は迷子の「生き物」。
帰り道が分からなくなっていたんですね。
ストーリーも絵柄も可愛いのですが、映像になったキャラクター達の動きがまた余韻がある感じで
まさに絵本がそのまま動き出した雰囲気。これは良いですね!
さすがアカデミー賞のショートフィルム賞受賞作です。
🌸アライバル
また不思議な生き物が表紙に描かれていますが、こちらは「移民」の本。
訳あって生まれ育った国を離れ、なじみのない土地、文化の中へ突然行く事になった男とその家族が引越した部屋には
これまた出会った事のない雰囲気の先住者がいて…
ええ、それがこの表紙に描かれた白い謎の生き物なんです。
移民にしてみれば見慣れない風景、馴染みのない言語、知らない食べ物など
違和感の連続、戸惑う事が何度もある生活に故郷の暮らしが恋しい気持ちになると思います。
わたし自身、自分の意思で外国に何年かいた事があるので、色々と思うところがあるのですが、
自分の意思で故郷の国を離れることすらやはり望郷の思いが募るくらいですから、
自分の意思でなく異国に渡る方たちはさぞ寂しいと思いますし、
どんな文化の世界が広がるか前情報もなければ
見る物全てが異質で理解しがたい物として目に写るかとおもいますよね。
「アライバル」では異質な風景、生き物、食べ物を地球上にはない空想のもので置き換え
台詞のないコマ割りで言語の壁を取り払った表現を使用した事で、
視覚から心に直接メッセージ伝えてきます。
🌸夏のルール
「夏のルール」からも大型の油彩が何点か展示されていたのですが、
個人的に1番、好みど真ん中な絵本がこれかもしれません。
こちらはアライバルみたいな強いメッセージ性はないのですが、
子供の頃の想像力を思い起こさせるような、現実と空想を行きつ戻りつするようなシュールさ満載のファンタジー感があります。これは良いです。ほんと好み。
この絵本欲しい!と思ったのですが、美術展のグッズ売り場になくて帰宅。
家に帰って調べたけれど日本語版は中古品しか見つけられず(しかも5000円だった)
英語版ならAmazonにて2000円台で見つけたけど、日本語版の再版を待つのが良いかなあ。
🌸内なる町から来た話
うっすら透けて見える赤い大きな魚、キラキラした夕暮れの町の光が気になる絵です。物語性の感じさせる大きな油彩が並ぶのは、
可愛くて不思議な生き物たちのイラストがお目当ての作品だったのですが、もう少し大人向けの童話本という感じなのが「内なる町から来た話」の展示。
部屋の中に巨大なオウムの頭部があったり、裁判所の階段にクマが訴訟に来ていたり、これはまた私の好きな童話作家ミヒャエルエンデ「鏡の中の鏡」を彷彿とさせる不思議さ。
(ストーリー性を感じさせる絵画展で、かつ、割と近い時期に開催していたピータードイグ展の記事も良かったら覗いてみて下さいませ)
大人向けなので結構しっかりしたハードカバーの、それなりに分厚い本です。
ちなみに次に出てくる「エリック」もこの本の中に掲載されています。
🌸エリック
エリックは小さな小さな交換留学生の話。
ティーカップに隠れられるサイズ。
せっかく交換留学できたのだからと言って観光に良い場所に連れて行っても道路の上に落ちた瓶の蓋だとかにばかり興味を持って…
この留学生がおうちに来てから帰ってしまうまでを描いたストーリーで、この話だけ単独で小さなサイズの絵本になっています。
ミニサイズなのと1000円なので、ちょっと誰かにプレゼントするのにも良い感じ。
このエリックというキャラクターが、ショーン・タン展で横浜そごうとコラボした紙袋などに載っているんですね。
レストランのキャラクターフードにもなっていました。(後述します)
🌸立体作品
他にもまだまだ絵画は並んでいたのですが、興味深かったのが立体作品。
これは自分のイメージを立体に一度起こす事によって、イラストによりリアル感を持たせるための作業だったようです。
チラシの左に載った写真は「セミ」ですが、都会のオフィスで働くセミの話主人公。
宇宙人のようにも見えて、とても愛らしい気持ちにさせてくれる不思議なイメージです。
🌸アトリエ
ショーン・タンの作品は撮影禁止だったのですが、最後のアトリエ(インスタレーション)が撮影可能でした。
スケッチと画材が散乱している中にピーテルブリューゲルの絵葉書があったりして、ショーン・タンのイメージを起こすための源流のようなものに触れることができるスペースです。
これは実際にショーン・タンの世界展に行ってみた事で触れられた世界観でもあって興味深くめっちゃ見てました。笑
🌸ショーン・タンからのメッセージ
あと最後にショーン・タンから展示会開催に向けてのメッセージも。
横浜のビルに乗ったエリックが花の観覧車に水をあげているイラストはなんだかほのぼのとします。
🌸横浜そごうとのコラボ
最後に写真を撮れるブースと、コラボの紙袋紹介、それとそごう10階にあるレストラン「イー・エー・グラン」でのコラボメニューの紹介が。
エリックの可愛さも良いですが、アライバルの表紙をイメージしたレモネードの色がとても綺麗です。
時間がなくて寄らなかったですが、ちょっと行きたかったな。
横浜そごうのイー・エー・グラン(e.a.gran)では美術展コラボのメニューをやったりしているようなので、美術展行く人はチェックしてから行くと良さそう。
(不思議の国のアリス展コラボのカフェメニューとか、気になる)
🌸図録
最後に図録の紹介です。
今回の美術展で展示されていた油彩、イラスト、スケッチなどが載っていて、ショーン・タンが好きな方にはもちろん、絵本を描いている方、ファンタジーが好きな方にも楽しめる内容です。
本も色々と出版されていますが全部買うのはちょっと…と思う方や、大まかな代表作品だけでも押さえておきたい方にもお勧めですよ〜。
(私は買って良かったと思ってます😊)
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