日本が世界に誇る現代美術家6人の作品を集結させた展覧会、森美術館「STARS」展に行ってみました!
期間は2020年7月31日〜2021年1月3日、場所は六本木の森美術館です。
相変わらず展示期間が終わってからのブログですいません(汗)
🌸STARS展(森美術館)とは
「STARS展:現代美術のスターたち ーーー日本から世界へ」(公式サイトはこちら)
日本が世界に誇る現代美術家6人の作家とは、草間彌生、李禹煥(リーウーファン:LEE UFAN)、宮島達男、村上隆、奈良美智、杉本博司。(敬称略)
この大物現代美術家達の初期代表作と最新作の展示があるんですね。
これは行かないとーーー!
というわけで、オンラインチケット購入して行ってまいりました。
森美術館
森美術館は六本木ヒルズにあります。ヒルズの入り口には村上隆のオブジェが。
🌸行ってみたレポ
1人目:村上隆
日本が世界に誇る現代美術家6人の1人目は村上隆。
まずは初期の代表作「マイロンサムボーイ」から。オークションにて15億円で落札された作品です。
なんというパンチ力。背景にある絵が精子に見えてきそうな配置でもあります。このセッティング、面白いですね。
村上隆といえば、「スーパーフラット」という概念を1つのムーブメントに興した作家さんです。
スーパーフラット
スーパーフラットとは日本における平面的で二次元的な絵画(伝統的なものから)、漫画、アニメ、キャラクター文化といったもの、アートムーブメントのこと。
平面作品だけでなく日本のアニメ等の立体作品(フィギュア)も含みます。
富士山を描いた最新作と、他の作品たち
最新作からは富士山の絵画が。
村上隆は五重塔や桜の中に一見ポップながら観光物として消費されていくものを描いた作品が並びます。
ちなみに個人的には猫の被り物を頭につけたカップルが福島の原発跡に遊びに行く映像作品「原発を見に行くよ」が結構ツボだったりします。
2人目:LEE UFAN
日本が世界に誇る現代美術家6人のうち2人目は李禹煥(リーウーファン)。
初期の代表作「関係項」です。李禹煥は「モノ派」の現代美術家。
モノ派
石や木、紙、綿、鉄板などといった「モノ」を単体、あるいは組み合わせて作品とするという現代美術ムーブメント(1960年末〜1970年中期)。ものへと還元することでアート再創造を目指したもの。
1968年に関根伸夫が発表した「位相—大地」について李禹煥が新たな視点で評価し理論づけたことが始まりです。
「モノ派」は既成概念を壊すものであり、また李禹煥が日本人ではなかったこともあって当時ほとんど理解されず、拠点をヨーロッパに移して活動していきました。
最新作「対話」
最新作からは「対話」、余白が語りかけてくる作品です。
芸術の島、直島には李禹煥美術館(公式サイトはこちら)という建築家の安藤忠雄とコラボした美術館がありますが、自然と作品の融合が美しいです。
3人目:草間彌生
次の部屋に入ると目に飛び込んでくるのは男性器をモチーフに「舟」「椅子」「梯子」などを模したソフトスカラプチャー。
日本が世界に誇る現代美術家6人の3人目は、「水玉の女王」こと草間彌生です。
幼い頃より統合失調症を患っていた草間彌生は、苦しめられる幻覚や幻聴から逃れるために、それらの幻覚・幻聴を絵に描きました。
1957年に渡米し、絵画や立体作品だけでなく「ハプニング」とよばれる過激なパフォーマンスで「前衛の女王」という呼び名が。
アウトサイダーアートについて
精神障害を持つ人々のアート作品は「アウトサイダーアート(アール・ブリュット)」と呼ばれることもあり、美術館は日本あちこちにあります。
「アウトサイダーアート」は美術的な知識、技術を学んでいない人の作る作品なので、ちゃんと美術を学んだ草間さんとは違うのですが、
精神疾患をもちながらアート作品を作るという点ではほど近いもの。
滋賀県にあるNO-MA(公式サイトはこちら)は近江八幡市の歴史的な重要伝統的建造物群保存地区にある昭和初期の町屋を改築し、2004年6月に開館した美術館なのですが、
ここは私がいつか行ってみたい美術館の一つです。
一般のアーティストの作品と共に並列して見せることで「人の持つ普遍的な表現の力」を感じていただくところにあります。このことで、「障害者と健常者」をはじめ、様々なボーダー(境界)を超えていくという実践を試みています。
ボーダーレス・アートミュージアムNO-MA https://www.no-ma.jp
少し脱線してしまいましたが、話をSTARS展に戻します。
ミニマリズム
1960年代、アメリカに登場し、「minimal(最小限) + ism(主義)」として最小限度まで構成要素を切り詰めようとした結果生まれたシンプルな様式。
この様式、もとはロシアに萌芽があり、ロシア革命でアメリカに脱出した作家カジミール・マレーヴィチ(円と三角形と正方形のみでの芸術を極限まで突き詰めようとした)や、ヨーロッパから移住した作家ピエト・モンドリアンらによってアメリカに輸入されました。
最新作「たくさんの愛の素晴らしさ」
90歳を超えて今も作品を作り続ける草間彌生さんの最新作からは
「たくさんの愛の素晴らしさ」を。
草間弥生さんの公式サイトはこちら。
4人目:奈良美智
日本が世界に誇る現代美術家6人の4人目は、スーパーフラットな作家の1人、奈良美智さん。不機嫌そうな表情の少女の絵が人気の作家さんです。
奈良さんの描く少女には、純粋さと不安、怒り、残虐性が同居しています。地雷探知機を遊び道具のように手にする少女。POPで毒のある可愛い絵…
絵の表面的なモノが消費されていくだけという消費主義への虚無感、消費主義を取り上げる作家の多さ。村上隆もバンクシーもそうですよね。(横浜の「バンクシー展」に行ったブログ記事はこちら)
奈良さんは、元は作家になろうと思ってなかったとのことです。パンクが好きで、集めたレコードジャケットがたくさん展示されていました。
このSTARS展のポスターにもなったこの家型インスタレーションの中には作業場所でしょうか。アトリエのように小さなイラストが壁に貼ってあり、イメージを生み出すアイテムが並んでいたり…
奈良美智さんのアトリエといえば、今は閉館してしまった原美術館の2階にも展示がありました。(撮影不可のため写真はありませんが、ブログ記事はこちら)
奈良さんは福島県の県境に住んでいて、3.11の地震・津波の際に、美術に対する情熱が崩壊してしまったそうです。
「誰のために描くのか?」と自問自答されていたという話をNHK「日曜美術館」で言ってみえたのが印象的でした。
最新作「ミスムーンライト」
奈良美智
《ミスムーンライト》
最新作「ミスムーンライト」には、これまでの不機嫌な表情の少女というイメージから一転し穏やかな顔の少女の姿が。
何色もの色が髪の毛の中にぼんやりと光り、月光の中にいるように描かれています。
5人目:宮島達男
日本が世界に誇る現代美術家6人の5人目は、数字を通して生と死を表現してきた作家、宮島達男です。
初めてデジタルカウンターを使って1987年に作った作品がこちらです。
14桁の数字を使って30万年を数えられる時計を作品に、永遠や無限を表現したもの。
「時間」を絵の中に入れ込み、「記憶」として残していく、そんな試みをされています。
最新作「時の海 東北」
最新作「時の海 東北」は、3.11プロジェクトで今も続いている作品。
被災した人を中心に速さを設定してもらった3000個のデジタルカウンターで光るのは1〜9の数字。
青のカウンターと緑のカウンターはそれぞれ数字が増えていくものと減っていくものとに分かれていて、一度消えた数字は再び9へと連環していきます。
このループする数字は、生から死、再び生まれ生きる繰り返しを表現していて、3000人の人たちの記憶として作品を構成しています。
アートは「今生きている人たちにとってこれからをどう生きるのか」という役割を持っており、10年前にあった地震も今生きている人たちのために記憶があると、宮島さんは言います。
カウンターは0以外の数字をそれぞれ違う3000のリズムで刻んでいますが、この3000の死と世のサイクルは「灯籠」であり海をイメージする水の中に永遠の命を表現しているのだと。
震災にあった人たちの中で、海に対して悪く思う人は誰もいなかったそうです。
(この作品のプロジェクトについて宮島さん語るビデオが会場には流れていたのですが、感動して泣いてしまいました。美術館で泣いたのは初めてかもしれません)
6人目:杉本博司
日本が世界に誇る現代美術家6人の六人目は杉本博司さん。
デビュー作「白熊」では、ペンギンを今にも食べようとしている白熊の近くへ写真を撮りに行く勇敢な写真家と評されたのですが、実はこれは博物館の剥製。
死んでいるものを生きていると捉えることができるのは不思議な錯覚です。
杉本さんは、子供の頃から僕は生きてるのか死んでるのかわからないと感じていたそう。
同級生が死んだ姿をみて人は死ぬんだなあと思ったが、現実世界の浮遊感をなんとか写真に撮って証明したいという一心で撮ったということです。
精神科看護師的にはこの「現実世界の浮遊感」状態を解離性障害の一つ「離人症」的な状態のように感じるのですが
私自身に離人症的なところがあるので、この感覚を作品にしようとした杉本さんの感性に、他人と思えないほど共感してます。
最新作「時間の庭」
最新作は「時間の庭」です。
神奈川県江之浦に杉本博司さんが作った「江之浦測候所」(2017年開館、小田原文化財団公式サイトはこちら)の四季折々を20年、細部まで映画に映し出したもの。
こちらは庭園、建築、古美術、化石、写真、舞台芸術など、杉本さんワールド集大成の施設です。
太古の時間を感じさせる映像に、DNAに残っている懐かしさを辿る構成。
「心」はどこから生まれたのか探し求めて
最後は海にたどり着く、海が見える丘に
杉本博司「時間の庭」
NHK「日曜美術館」で、宮島達男さんが時間というものはなく記憶である、時間の意識を持ったところから心が生まれたんじゃないかとおっしゃっていました。
STARS展のお二人の作品はどこか深いところで繋がる感じがします。
🌸グッズ
日本が世界に誇る現代美術家6人のグッズ、これも目玉でした!
溢れ出る物欲と戦いながら、なんとか購入するグッズを絞り込んだ結果がこちら。
奈良美智さんのバッジと、杉本博司さんのコップ。このコップの表面にはデジタルカウンターの数字が書かれているのですが、冷たい液体を注ぐと色が変わる仕掛けになっています。素敵。
森美術館のSTARS展オンラインショッピングでグッズも買えるので、気になる方はCheckしてみて。
Lin🌸